残業代が支払われない類型

残業代が支払われない類型

以下のようなケースで企業側が残業代の支払いを拒む、または、労働者側も支払われないと認識していることがあります。 ですが、その理由が正当なものなのかどうかは慎重に検討する必要があります。 ご自身の勤める会社や勤務体系は如何でしょうか? もしかしたら未払いのままの残業代が残っているかもしれません。

○上限設定型・下限設定

会社が毎月の残業時間の上限を決めて、その上限までは支払うけれどもそれ以上は支払わないという場合です。 例を挙げれば、「一日4時間以上/月30時間以上の残業をしてはならない」とする内規を作ったり、一つの課などで月に決められた一定時間まで、 例えば180時間までの残業時間枠を設けるなどです。

その枠の中であれば残業代を支払うという規定であり、あくまでも「あまり残業をするな」という規定ではあるのですが、と言うのも、このような規定だけを設けても、実際には定められた時間内に仕事をこなす事が不可能な場合、 従業員がやむを得ず「内規に反して」サービス残業を始めることなってしまいます。

内規に反して働いているという状態になるため残業申請はしにくく、記録上は規定内の残業時間で仕事がこなせているように見えてしまうので、 人員を増やす理由も仕事量を減らす理由も記録上は見えなくなり、以後それが常態化してしまうといった結果に陥りやすいようです。

そのような職場では、本来「あまり残業するな」という意味だったはずの内規が「残業してもいいが、残業賃金は払わない」という裏の意味をもってしまう場合が多いようです。

しかし、時間外の労働については、残業代は発生します。 例え、労働者側が会社の上限・下限設定に同意していたとしても、残業代は発生します。

○名ばかり管理職

労働基準法「第41条」に「管理監督者(「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」)は労働基準法に定める労働時間などの規定の適用を受けない」と、ありますので、残業代の請求はできません。

そこで、管理職を管理監督者とみなした上で、名目だけ管理職に昇進させ、少額の管理職手当と引き替えに残業手当をカットする方法が採られることがあります。 しかし、管理職全てが第41条が規程する管理監督者に該当するとは限りません。 出勤・退勤時間の自由はなく、職務権限もないため、会社の判断に従い、多少の管理職手当の支給を受けているものの、長時間勤務を余儀なくされている方も多いようです。

過去にコナカ、日本マクドナルドの直営店長が同社に対し残業代の支払いを求めた裁判では、裁判所は店長側の訴えを認め、日本マクドナルドにおける店長は管理監督者とはいえないとの判断を下しております(管理職かどうかの判断はしていない)。 これらの訴訟で名ばかり管理職という言葉が生まれ問題視されております。

他にも一番下っ端の社員の肩書きが「幹部候補生」「管理職(課長および店長)候補」(いずれも管理職扱い)であった例、3000人規模の会社で数百人の「課長」がいる例、高校を卒業して入社した金型工場で19歳でいきなり管理職扱いにされた極端な例などの報告されております。 彼らはいずれも管理職でありながら部下はおらず、また「課長」「店長」であるにもかかわらず出退勤の時間が管理されていたそうです。 例に挙げた方々は勿論残業代は支払われていなかったようです。

○みなし労働制

労働時間が把握しづらい一部の職種には、みなし労働時間という制度が適用される事があります。 「この仕事には大体○時間くらい必要だから、細かい労働時間の計算はおいといて、1日あたり8時間働いた事とみなしましょう」というのがみなし労働時間制という制度です。 特殊な技術などを研究・開発している場合、仕事の進み具合によって日々の労働時間が大きく異なります。

映画やゲームソフトの製作に関わる労働者や、会社の事業展開そのものを取り仕切る労働者は、激務が続く事もある反面、仕事に区切りが付けばある程度まとまった休みが取れたりもします。

このように、いちいち指示を受けて働くよりも労働者の判断で自由に仕事を進めたほうが合理的な職種に関しては、その仕事を行うに当たって通常必要とされる時間を予め計算しておき、その時間分働いたと「みなす」事が可能です。
みなし労働時間制の場合、あらかじめ「○時間働いたとみなす」訳ですから、基本的には残業時間は「みなした」時間に含まれていることになります。

例えば定時出社・退社だと月に160時間労働になり、これを180時間働いたとみなす場合、20時間分の残業代が含まれていることになるので、会社は労働時間が180時間までの労働者には残業代を支払わなくても良い事になります。 但し、労働者がみなした時間以上働いた場合はやはりその時間に対して残業代支払いの義務があるので、会社は労働時間の管理をしなくてよいという事にはなりません。

また、会社との契約上の休日や深夜に関しては、もともと労働時間として想定されていない時間です。 このため、みなし労働時間制を採用していても、休日労働・深夜残業の割り増し賃金は追加で支払う必要があります。